南仏・ムスティエ どうやって岩壁に鉄の鎖と金の星を架けたの?
フランスのグランドキャニオン、 ヴェルドン大渓谷の
西側の起点に「ムスティエ・サント・マリー」がある。
01. ムスティエは 高さ数百メートルの石灰岩の
断崖を背にした 他に類を見ないような 驚くべき
舞台装置のただ中にある町だ。
02. 観光客は まるで 立ち塞がる岩壁に
吸い寄せられるように 村の中へ入って行く。
03. どん詰まりで 屹立した2つの断崖が待ち受ける。
よく見ると 2つの峰の 高さ60m付近に
長さ135mの 鉄の鎖が架けられて、
なんと 真ん中に 金色の星が輝いている !
04. 伝説によれば 10世紀
地元ブラカス家の騎士が 十字軍遠征に従軍した折り
サラセン人の捕虜となってしまう。
彼は 無事故郷に帰れた暁には 故郷の断崖に
星を捧げると神に誓いをたて、 解放後 彼は
本当にそれを実践、 鉄の鎖と星を峰に掲げたのだ。
05. 10世紀の 最初の星には 突起が16あったが
現在の星には 大小合わせて10個の突起があり ⤴
星の大きさも 30cm 180cm と変化し、
現在は125cm、 鎖の重量は150kgだと言う。
写真は ノートルダム渓谷沿いの古い教会。 ↙
ロマネスク様式のアーチを持つ鐘楼塔が
すっくと立つ様が 印象的だ。
06. 一方山腹の 「ノートルダム・ド・ボーヴォワール
礼拝堂」 までは 262段の石段を登らねばならない。
ロマネスクのポーチと ルネッサンス様式の木製ドア
の礼拝堂に 糸杉が寄り添い、 頭上には金の星、
何とも言えず 劇的な構図だ。
07. さて、清らかな湧水もムスティエの魅力だ。
08. 伏流水が 石灰質の断崖から湧き出たたことで
5世紀来 修道士が凝灰岩の洞窟に住むようになり、
村にも湧水が流れ込んだことで、教会が建ち 産業が興り
やがて ムスティエは 立派な町になった。
09. その産業の代表が 「 ムスティエ磁器 」。
アトリエがあちこちにあり、 見て回るのが楽しかった。
そもそもは 17世紀イタリアから来た修道士が、
乳白色の磁器を作る技術を伝えたのが始まりだ。
そして 当初は地場産業だったムスティエ焼きだが、
10. ルイ14世によって
戦争で疲弊した財政負担を軽減する為
贅沢な金銀の食器の 使用禁止令が 出されると
ムスティエ焼きは 一躍 王侯貴族にも
もてはやされるテーブルウエアの主役になった。
その後 21世紀まで 盛衰はあったものの
一品一品手作りされる 高級品の誉れが高い。
11. ところで 食器の白地に対し 図柄には
時代ごとに 大きな変遷があった。
初めは 王侯貴族の狩りなどをヒントにした図柄、
イタリア趣味のグロテスク模様などが 主流だったが
近年では プロヴァンス独特の草花模様が描かれ、
私など より親しみを感じたが、 値段もあり
実際 買うまでには至らなかった ・・
12. ムスティエは 当然ながら
”フランスの美しい村 ” に指定されており、
穴場の観光地として 大変人気が高い。
こんな奥地へよく行ったものだ、と私も感慨深い。
13. ところで、 千年も前 どうやって
60mの高さに 鎖を架けたのだろうか 、、
大昔のことは 実際 何も分かってないらしい。
ただ、これまでに10回以上の架け替えがあり、
一番最近が 1957年で、 鎖は64歳となる。
( 04.の写真参照 )
但し 1995年に 一度鎖が切れて落下したので
現在のは 修理後26歳ということになる。
その折 星には新たに金箔が貼られ、 なんと
ヘリコプターを使って 鎖を架け直したと言う。
次に行かれる方がいらしたら、 望遠鏡を持って
星の突起が幾つあるか、 金箔の具合はどうか、
鎖に傷みが無いか 見て来ていただきたい !
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