オンフルールは画家の聖地

2011年9月28日 (水)

サティの失恋 オンフルール

芸術家たちの天国と呼ばれる オンフルール Honfleurが 魅了したのは  画家ばかりでなく、

 

文学者や音楽家も その例外ではありませんでした

             



「  エリック サティ Erik Satie 」も 1866年 ここで生まれている

            



01.    サティと言えば、「 ジムノペヂィ 」、「 グノシェンヌ 」、「 お前が欲しい 」など、

曲名を知らなくても、 そのメロディは 一度は耳にしているはず ・・

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                     ( オンフルール 旧総督の館)








02.     透明感と静けさをたたえた サティの音楽は 日本人にも大人気です

日本画の あの<余白の趣き>にも似て、 饒舌でない彼の音楽には 癒しがあふれているからでしょうか

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                                 ( 港と画家 )









03.   美しい この木組みの家で、サティは 12歳まで暮らしました   

 

子供の頃 入り浸っていた教会で、まず、教会音楽の洗礼を受け、

その後 パリで 音楽の専門教育を受けるが、 アカデミズムが 肌に合わず、  すぐに挫折 !

以後、” 高等音楽院卒業 ” というレッテルを持たぬまま   人生の大半を、 

カフェや酒場の ピアノ弾き で過ごしつつ、  独特なああした音楽を作曲していったのです

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傘は サティのトレードマーク    ( サティの生家 )




                         




ところで、 当時にあっては 時代を先取りし過ぎた感のある サティの音楽は

批評家たちや ラヴェルなど ’全うな音楽家たち’の 恰好の攻撃の対象となりました

そうした事情から

一見、  穏やかなはずの彼の音楽には、  実は 世間の無理解と嘲笑に対する 

屈折した激しい自己主張が  悶々と  のたうっていたのです・・・!

           

04.    さて、サティの生家 (Rue Haute 90番地)での インスタレーションは

ちょっと 掴みどころのない モダンアート風の表現でしたが、

 

白いピアノ (YAMAHAマーク!)の自動演奏だけは サティの音楽を 確実に再現しておりました

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( サティの生家での展示    絵は 恋人だった シュザンヌが描いたサティ  )





彼が 屈折した人生を送ったことは 上で触れましたが、 因みに 彼の曲のタイトルを

目にしたら ビックリですよ~

 

「犬のためのぶよぶよした前奏曲」
「官僚的なソナチネ」
「社交界の名士のためのカンカン踊り」
「いんげん豆の王様の軍歌」
「小さなチューリップ姫のおっしゃること」

 

 

「なまこの胎児」
「干からびた胎児」
「不機嫌な囚人」
「夢見る魚」 

 

「大きな頭の友達が羨ましい~」
「太った木の人形の素描と媚態」
「いやらしい気取りやの 3つの優雅なワルツ」   

 

etc・・・

         

05.    サティは まっとうな音楽教育を受けなかったが  ” 女でも失敗したのです ”

彼に 大打撃を与えた女 
それこそ シュザンヌ ヴァラドン Suzanne Valadon 1865~1938

言わずと知れた モーリス ユトリロ Maurice Utrillo の母親 !



洗濯女の私生児として生まれた彼女は  小さい頃から 独立心旺盛、

 

酒癖の悪い 一筋縄ではいかぬ 気の強い女でしたが、 個性的なその美貌も相まって

モデルとして モンマルトルの画家達に 芸術の養分を与え、また同時に スキャンダルの種を撒いた人物でした

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                                                          (  シュザンヌとユトリロ )



06.   ルノワールの「都会のダンス」「ブージヴァルのダンス」のモデルが  シュザンヌ

ユトリロが生まれたのは 丁度ルノワールと付き合いのあった頃で、

親子関係もささやかれるが、 今や DNAを調べるわけに行きませんし・・・

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                             (ルノワール)






07.   彼女が「チビ」と呼んだ ロートレックも 恋人であり、 泥酔仲間であり、

お互いの芸術を認め合い、尊敬する同士でもありました

シュザンヌは モデルだけでなく 自らも絵を描いた女性ですが

  
たくさんの本を借り、芸術上の教養を与えてくれたのが ロートレックだと言われています

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         (    ロートレックの描いた シュザンヌ    )






08.   シュザンヌ ヴァラドンは、 既に9歳の頃から 紙さえあれば 手当たり次第
 

それらをクロッキーで埋め尽くすような女の子でした

 

(  線の強い 活き活きとした 素晴らしいタッチではありませんか!   ↓  )


            




デッサンを見た ドガも 一目で才能を見抜き、「あなたは我々の仲間です」と 手を差し出す

以後、ドガの手ほどきと 手厚い庇護を受け、 シュザンヌは 一人前の画家となっていく

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           (   シュザンヌ ヴァラドンの デッサン   )




                 




09    ここで やっと、   エリック サティ Erik Satie の登場となります !
  


草臥れたコートと型崩れした黒い帽子、丸眼鏡、 手にはいつも雨傘

変人としか言いようの無い 風采の上がらぬサティと

 

シュザンヌが どうして付き合うことになったかは 定かではありませんが、


あっという間に シュザンヌの側に ” 倦怠の風が吹く ”     

わずか 6ヶ月足らずの愛人関係でした !

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             ( シュザンヌ ヴァラドン  「 ユッテルの家族 」   )







10.    その半年に、 300通以上の 賛美と懇願のラブレターが サティからシュザンヌに送られたが、

その多くは 開封もされず、   歴史の闇に消えていきました

          



その時の サティの失意と苦悩は 如何ばかりとは思うが、


以後、サティは 一切 女体に触れることなく 生涯を閉じたほど それは 深い心の傷となりました

彼の臨終の時まで アパルトマンの彼の部屋に 誰一人、 友人すら足を踏み入れることはなかったと言う

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                            ( オンフルール)   








サティにとっては シュザンヌ ヴァラドンとの恋は ” 世紀の大失恋 ” であったが、

シュザンヌにとっては ” かすり傷 ” みたいなものだったかも知れない



息子のユトリロが 長じたあとも、 

シュザンヌは  息子より3歳若い、  息子の親友の画家と結婚し、  離婚する

そして、 死ぬまで 恋は続いた・・

                 



とまれかくあれ、 シュザンヌは、恋多き人生から 力強い油絵の大作を 次々生み出し、、、

サティも  今日世界中でもてはやされるような 魅力的な音楽を世に残し 、、、


恋とは・・・ そして芸術とは・・・    いやはや なんと 甘くて にがいモノ!!


2011年9月23日 (金)

木の教会って見たことありますか~ オンフルール

                                    





01.   パリ方面から  ラ・ロッシュ・ギュイヨン城 Chateau de La Roche Guyon などを眺めながら   セーヌ河岸の 白い石灰岩の道を辿ると、   やがて、 

イギリス海峡に面した   セーヌの河口の町  「 オンフルール Honfleur 」 に着く

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02.    旧港に面したこの風景は  古今東西、プロ・アマを問わず、 

芸術家たちの魂を虜にして来ました    一種の 「 風土病 」 だそうですよ~


オンフルールが 惜しみなく与える霊感で、
芸術家は みな オンフルール病に罹り
 

’その気’に なってしまう らしいのです

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03. さて木で出来た教会って 見たことありますか~

港に面して建つ 美しい家々の向こう側の 二つの屋根、   あれが 

木造の サント・カトリーヌ教会 Eglise Sainte Catherine です!

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04.    ノールウィ、ポーランド、ルーマニアなどには 幾つか木造教会があるらしいけど (写真は ウィキぺから )

 

木立に囲まれて佇む 可愛らしい お伽の国の教会のようですね~!

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05. 一方、 このオンフルールの サント・カトリーヌ教会は  西ヨーロッパでは 本当に稀な 

大型の「丸ごと木造教会」です    何故
、このような珍しいものが ここにあるのでしょうか~

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06.      15C 百年戦争がどうにか終結し、英軍が引き上げると、

全ての石工や建築家が 荒廃した町の再建のため 召集される

造船技術に長けた 町の船大工たち 「斧親方 Hoche Maitre」は 居ても立ってもいられない
  

石工たちの手が足りないなら 俺達がやる、 一刻も早く 神への感謝を表わしたいと

こぞって 進んで  教会の建設に着手したのです

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( 左手の、「 鐘楼 」は 教会から独立した とても珍しい 「一本立ち鐘楼 Clocher isole 」で

今も鐘撞き人が 中に住んでいます  )

        




07.    さすが 船大工たちの見事な作品、  ” 船底型 ”の天井が 2列に並んでいます 

天井が 木で出来ている教会は ヨーロッパでは 無い訳ではありません

ただ、 基礎以外 側壁も含め ” 丸ごと木造 ”  という点が 珍しいのです~

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08.     日本人にとっても やはり 木はいいですね~

しかしながら  500年もの間、 よく火事にならなかったこと・・・!

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09.   生憎の雨模様でしたが、  たくさんの観光客が この教会を 訪れていました

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10. ところで、 教会の入り口、 ハンディキャップのある人が  一風変わった乗り物に 乗っていました

 
 

貼り紙には   「 事故に遭って、側頭骨を骨折しました
 

それ以来、左耳の難聴、平衡感覚の喪失に悩まされています

私達を’ 助けてください!  レストランの食券でも構いません 心から感謝します! 」

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ヨーロッパでの、 物乞いのかたちは さまざまですが こういうスタイルは 初めて・・

 

        

ネコちゃんたちにも   聖人カトリーヌのご加護がありますように~~

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