ノーベル平和賞とノールウェー 国王夫妻の醜い?肖像画
マザー・テレサ ダライ・ラマ 金大中 アウンサン・スーチー
ネルソン・マンデラ 佐藤栄作 バラク・オバマなどが 受賞した
ノーベル平和賞は
ここ 「 オスロ市庁舎 1950年建設 」 で授与式が行われる。
セレモニーが行われる セントラルコートと共に
館内を彩る 多くの 独特な雰囲気を持つ壁画・絵画も見どころだ。
01. ノーベル賞と言えば 毎年スウェーデン・アカデミーによる
発表が注目されるが、 実はノーベル平和賞だけは ノールウェー国会の
選考委員が受賞者を決め このホールで授与式を行う。
他の5つのノーベル賞とは全く別物なのだ。
02. 普通壁画と言えば真ん中に神がいて 上部は選ばれし聖人
下部に地獄に落ちんとする人々が描かれるものだが、 このフレスコ画
「 働き楽しむ人々 」 では 一般庶民を主役として ノールウェーの
平和 自由 健康 男女の平等などが 象徴的に表現されている。
03. 反対側の壁画には 労働者 特にノールウェーに大きな恵みを
もたらす漁業に従事する者たちが描かれている。
04. ノールウェーは 約90年間 スウェーデンとの連合王国
と言う形で スウェーデンの支配下にあったが、
激しい独立運動を経て独立したのが1905年。 その後、
2つの世界大戦 ナチスドイツの占領 などを経て ノールウェーが
豊かな自由国家になっていくのに50年かかり、 さらに
他国に干渉しない ’ノルディックバランス’ という独自の外交方針を
以って 世界にその存在感を知らしめるのに もう数十年かかった。
05. ホール下部にある絵では 竜頭付きのヴァイキング船の勇者と
ヌードの女性で、 ノールウェーの今昔を一言で表現している。
壁画には経年変化のクラックや 観光客の衣服の摩擦などによる色落ちが
あり こうしてリタッチ補修が時々行われている。
06. 2階でも 女性の参政権運動 ナチ占領時の恐怖
労働者の権利獲得などにまつわる 様々な壁画が描かれていた。
ちょっとユーモラスな、 明るく薄い色合いで描かれたオスロフィヨルドの
ビーチの絵、 平和の証し 健康・自由を謳歌する人々が描かれているが、
真っ暗で陰鬱な極夜の時期には 一層人々に元気を与えることだろう。
07. さてその隣りに ノールウェー王室の前国王と王妃の肖像画が
飾られていた。 ハーラル王は デパート経営者の娘で洋裁と仕立てを学んだ
平民女性 ソニアと 多くの困難を経て9年かかって結婚したと言う。
08. その肖像画にびっくり! 王様とあれば 普通は必要以上に
美しく描くだろうに この汚れたような 醜い!? 仕上がりは ・・・
メディアからの批判もあったそうだ。
結局 この絵は言わば ’宮廷お抱え絵師’ によってでなく
市民の手によって描かれた現代画 と言えそうだ。 そして
現代絵画独特の自由な表現法が許される先進的お国柄と 絵に
お墨付きを与えた国王・王妃の鷹揚で進歩的な姿勢が
この絵から透けて見える。
09. さてここは 「 結婚の間 別名ムンクの部屋 」
市民がこの部屋で 結婚の届け出をする。
10. ムンクの絵 ’ Life ’ を背に 幸せそうな二人
’ 不幸を絵に描いたような絵 ’ が多いムンクだが
( 婚姻手続きの写真は human-Etisk Forbund から )
11. ところで 何故ノーベル平和賞だけノールウェーなのだろう。
ノールウェーの独立運動が最も激しい時期に晩年を過ごしたノーベルが
スウェーデンとノルウェーの和解と平和を願い 遺言を残したそうだが、
独立後 経済力と 中立化路線で政治力を付けたノールウェーにとって
ノーベル平和賞は それを授与するに相応しい平和国家であり続け
ねばならないと 自らを戒めるよすがとなっていることだろう。
12. 揺りかごから ご老人まで 高福祉の恩恵を受ける
オスロ市民たちのひとコマ。 マフラーを被る子供たちもいる。
ノールウェーの移民受け入れ数は 2016年を境に激減している。
どの国も 自国ファーストとヒューマニズムのはざまで葛藤している問題だ。
13. 日本人と同じく ” 木肌のぬくもりを知る国の人 ”、
彼らも 休憩時間は スマホをいじる。
ナポレオンの歴史画のような派手さもなく、
どう把握したらよいか つかみどころのない宙ぶらりんの気分だった。
しかし 西ヨーロッパの国々と一線を画した 独自の文化と政治
それこそが 北欧らしさなのかも知れないと気付いたところでした。
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コメント
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bellaさん、こんばんは(^o^)/!
実は私もノーベル平和賞だけがなぜノルウェーなのか、疑問に思っていました。
ノーベルの遺言によるものだったのですね。
それにしても前国王夫妻の肖像画・・・、たしかに何故このような肖像画に?と思わずにいられないですね。しかしこの絵にお墨付きを与えた前国王の心の広さに感服です。
投稿: 慕辺未行 | 2019年5月25日 (土) 22時32分