「アンコール・トム」 大らかでハンサム・観世音菩薩の四面塔
栄華を極めた クメール王朝最後の都市跡 「 アンコール ・ トム 」
アンコールは ’ 町 ’ を、 トムは ’ 大きい ’ を意味する。
その名の通り 大きく豪華、 そしてとにかく個性的な都城だ。
01. アンコールトム入口 「 南大門 」 に向かって左手には
ナーガ (蛇神) を引く神々の列が続く。 (54体)
アンコールトムは 一辺3kmの正方形の環濠と城壁に囲まれており
この道は その濠をまたいで 中央仏教寺院まで通じている。
02. 道の右手には ナーガを引く阿修羅の列が並ぶ。(54体)
神々と阿修羅は、 仏教世界の中心にそびえる山 ・ メール山に準えた
バイヨン寺院に 蛇を巻きつけ、 互いに引き合い、
大海に見立てた環濠 (海乳) を撹拌し、 そこから良き収穫物を得ん
とする説話 ’ 乳海撹拌 ’ を 表現しているとか ・・
屈強そうな石像が ズラリと並ぶのに ちゃんと話の筋立てが
あるのに驚いた。
03. これが そのメール山 ( 須弥山 しゅみせん ) の具現化、
アンコールトムの中心にある 「 バイヨン寺院 12C末 」 だ。
神々が ここに降臨し、 ここに住まわれるという。
空高く林立する仏塔は いかにも霊峰の如し ・・
04. バイヨンは 丸い中央祠堂を
四角い第一回廊、第二回廊が取り囲んでいる。 周囲には
聖池と呼ばれる池や 崩れたままの石の積み重なり などがある。
05. 柱列をくぐって進むテラスも、 光が差し込まない
地下空間もあり、 伽藍内部の構造はかなり複雑で迷路のようだ。
06. 回廊の各所には 様々な物語を表すレリーフが彫られている。
07. アンコールトムのハイライトは 「 観世音菩薩の四面塔 」 だ!
四面に菩薩の顔が彫られた塔が テラスに49、 塔門が5 ある。
合計216面の色々な表情の顔が居並ぶ様は 壮観で、
南国的な大らかさがあふれている。
08. これが 最も有名な観世音菩薩。 なんともハンサムな!
と言いたいところだが、 菩薩はその成り立ち、呼称、役割などにより
男性的であったり 女性的であったりする。
日本画でも 美しい衣をまとった 慈愛に満ちた母のような菩薩に
ちょろっとヒゲがあるのを見つけ ハッとすることがある。
歴史と地域による差異 、、 その系譜は複雑だが
バイヨンの菩薩は 男性そのものだろう。
09. というのも、 堂内の各所に彫られた 微笑みの女神
「 デバダー 」 の この上なく女性的で美しい曲線美と比べたら
ここの観世音菩薩群は まさに男性以外の何物でもない。
10. 「 パプーオン 11C 」 3層からなるピラミッド型寺院。
かつては50mあって バイヨン寺院より高かったといわれる。
2mの円柱が3列になって支える 「 空中参道 」 は
地上と天界をつなぐ虹の架け橋とされる。
11. 「 ピミアナカス 11C 」 9つの頭を持つナーガが
女身となって棲み クメールの王は毎夜ナーガと交わらねばならず、
一度でも怠れば 王は早死し 王国には災難が降りかかるという伝説の場。
左は らい病に冒されたライ王の像。 病魔に冒され 王の肉体が
崩れる一方で 壮大なアンコールトムと観世音菩薩が完成していく様を
三島由紀夫が戯曲に著しているそうだ。
12. 「 象のテラス 」 蓮の花を鼻で摘む象の列柱
造形的にも奇抜で魅力的だ ! 人々に敬愛される象の像は
城内のあちこちで 多用されている。
( 左側 ライオンとガルーダが一体化した聖獣ガジャシンハ )
13. 「 勝利の門 」 かつて 戦いに勝利した兵士たちが
ここを通って凱旋した。 この門にも観世音菩薩の四面塔があり、
象の像もしっかり両側に控えている。
アンコール ・ トムを見物し、 この門から退場したあと
次の訪問先 タ ・ プローム へ向かった。
同じ仏教といっても 日本の 侘び寂びの世界と異なり
直截的でダイナミック、
南国のエネルギーをまともに浴びた 一日となりました。
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