クールベの故郷オルナン これぞ水辺の風景画!
一般的な旅行先としては あまり有名ではないが、 フランス北東部
ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地方に位置する 「 オルナン Ornan 」 は
画家クールベの故郷として 絵画愛好家などに 知る人ぞ知る地となっている。
01. 「 ギュスターヴ・クールベ美術館 Musee Gustave Curbet 」
この ルー川 la Loue 沿いの風景は 物静かな 奥深いオルナンの魅力を
百の言葉より雄弁に物語っている。
02. 街の中心にある 「 オルナン橋 Grand Pont d'Ornans 」
その両側に、 心に沁みる ルー川沿いの水辺の風景が広がる。
街の背後に迫る白い崖も オルナンには欠くべからざる美しい舞台背景だ。
03. 橋の南側 水鳥が遊んでいる ・・
04. 朝靄に包まれて ・・
05. 橋の北側 オルナンと言えば これが看板風景だ。
06. こんな美しい街も 半世紀に一度ぐらいは災害に見舞われる。
市役所 (写真上左) に 1953年の大洪水の写真が掲示されていて、
川岸の水位計にも その爪痕が記録されていた。
07. ホテルの窓から 町並みやオルナン橋が見えた。
そして窓の日除けには 印象的な言葉が、 ” 夢 午睡 怠惰 ”
如何にも フランス人らしいつぶやきだ ・・・
08. 実は ルー川は フランスでもマス釣りの名所として知られていて
宿泊したホテル・ド・フランス は 入漁料を扱う元締めでもある。
ディナーは当然マス料理、 メイドがテーブル脇で身を開きサーヴしてくれた。
ところでクールベも 釣られた ” 瀕死のマス ” という絵を描いている。
09. さて、 ルー川を南側に辿ると 一層趣のある景色が待っていた。
これぞ 水辺の風景画 !
10. プロ・アマ問わず 画家が押し寄せる景勝地は数々あれど
オルナンは クールベの故郷と言うことを忘れても、
美しい風景画のインスピレーションが得られる穴場だ と思う。
11. ギュスターヴ・クールベ (1819 - 1877) は
オルナンの裕福な地主の子として生まれ、 21歳で パリに出る頃には
デッサンなど 十分な絵の基礎を身に着けていた。
また人間としても なかなか気骨ある人物として成長したようだ。
書簡によると ” 僕は今15歳。 僕は常に自由の中で生きて来たし、
自由のまま人生を終わりたい。 そして僕が死ぬ時 こう言われたい。
彼はどのスクールにも どの教会にも どの団体にも
どのアカデミーにも 属さなかった。
彼が属した ’ 自由体制 regime liberte ’ 以外には ・・ ”
12. クールベは 現実世界をそのまま描く レアリズムの旗手と言われ、
「 オルナンの埋葬 」 では 誰一人有名人が登場しない
名も無き田舎町の葬儀を まるで貴族の葬送のように壮大な絵画に仕上げた。
赤い服の聖職者は酒に酔って赤い顔をしているし、 縦に掘られた墓穴は
誰も死を逃れられぬと言いたげに 絵を見る者に向かって口を開けている。
背後の白い岩壁こそ 聖地ではなく、 外ならぬオルナンの証し。
「 画家のアトリエ 」 では 彼は自分の芸術生活を寓意的に表現している。
画家本人を中心に 右側には 自分を支える ’株主’ つまり
友人や労働者たち、 芸術を愛好するものたちを配し、
左側には 芸術を解さず 野卑な別の世界で生きる民衆、
政治家やブルジョワジーなどの搾取者、 無知なる批評家など
死によって生きる人々を 配している。
13. クールベは美形の血筋に生まれ アラブやトルコを思わせる
彫りの深い風貌だった。 魅力的な自画像を数多く残しているが
オルナンの街角 とあるショウウインドウ、
とりわけインパクトのある一枚を飾っていた。
いずれにせよ 画壇や批評家から激しく非難された彼の芸術と
彼の心に激しく渦巻く情念のバックグラウンドに
こんなに美しく こんなに静かな故郷、 オルナンがあったことが
不思議でもあり、 逆に 何故か納得してしまうのではある ・・・
。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。
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コメント
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こんばんは
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恥ずかしいことに、クールベという画家もオルナンという地名も、
全く知りませんでした
全く知らないからこそ、バーチャル旅行をより楽しませてもらっています
背景の山、川の流れ、街並み・・・どれも絵になりますね。
大洪水の写真を見て、かつてドイツで訪れたZellの街を思い出しました。
あの街もモーゼル川の氾濫に見舞われたことがあったそうです。
投稿: 慕辺未行 | 2017年6月 2日 (金) 23時05分
クールベ、ルー川、オルナン。
いくらかの作品は見たことがあるが、もちろん逢ったことは無い人。
行ったことも無い、地方や地名。
どうしてか、何故か懐かしい名前に思えるのです。
絵か写真か、見間違えるほどの美しい風景です。
現展、拝見しました。
ブログの「部分」よりも、当たり前ながら素晴らしいbellaさんワールド、さすがですね。
投稿: kurakame | 2017年6月 6日 (火) 08時33分
bellaさん こんばんは。
オルナンと言う地名は初めて聞きますが、
素晴らしい景観が保存されている街ですね。
水辺の光景が何とも、そのまま絵になる感じです。
機会があれば、ぜひ訪れてみたいです。
投稿: たかchan | 2017年6月 8日 (木) 20時17分