「フラ・アンジェリコの受胎告知」と「サヴォナローラは2回死ね」
受胎告知をテーマとした絵画は数多いが フィレンツェにある 「 フラ・アンジェリコの受胎告知 」 の
美しさは群を抜いている。 しかし、てっきり ’ 一枚の絵画作品 ’ だとばかり思っていた私にとって、
絵ではなく 壁画で、 ’ 修道院という祈りの場全体を見守る精霊 ’ のように見えたことは驚きでした !
01. 「 サンマルコ美術館 Museo di San Marco 」の内部、2階に上がる階段の先に
居室外側の壁に描かれた 「 受胎告知 」 が現れた。 その有名なフレスコ画はガラスで保護されていた。
02. 受胎告知が描かれた小部屋の内部にも 宗教画が描かれている。
03. ここは 昔 ドメニコ派の教会付属の修道院だったが 今はそのまま美術館になっている。
04. さて 2階には コの字型に修道士たちの小部屋がズラーッと並んでいて、 それぞれの部屋に
「 フラ・アンジェリコ Fra' Angelico (1387~1455年)」 が宗教画を描いている。
彼は名前の通り 天使のような修道士・画僧であったから、 彼の絵からにじみ出る信仰心と静謐な美しさは
誰かに解説されるまでもなく 静かに見る者の心に沁み渡って来る。
05. そして これらの小部屋の列の一番奥に 「 修道院長 サヴォナローラの部屋 」 がある。
「 ジローラモ・サヴォナローラ Girolamo Savonarola (1452~1498年) 」 は 禁欲的で狂信的な
修道士だったため、 当時の メディチ家の支配を頂点とするフィレンツェの繁栄 即ち精神の堕落を批判し、
贅沢な工芸品や美術品 楽器 詩集などを供出させ シニョーリア広場で燃やしてしまったのだ (1497年)。
( サヴォナローラの椅子 )
06. しかし 極端な締め付けは 往々にして大きな反発を招くもの。
不満が鬱積した市民や 反対派の修道士からの反撃を受け 翌年 今度はサヴォナローラが拘束され、
激しい拷問の末 教皇の意向が反映された裁判で 彼と主要人物の死刑が宣告された。
その処刑は ダビデ像が立つ このシニョーリア広場で行われた。 彼らの死の400年後、 処刑地点に
石のメモリアルプレートが設置されたが そこに書かれた言葉によると、 サヴォナローラと数人の修道士は
絞首台で吊るされたあと その足元に積まれた薪で焼かれたと言う。 彼らの遺骨は アルノ川に捨てられた !
つまり 絞首刑と火あぶりの刑と 2回死ねという宣告であり、彼らに対する憎しみの大きさが読み取れる。
07. さて、元修道院の小食堂には ギルランダイオが描いた 「 最後の晩餐 」 がある。
弟子たちは整然と並び、その反対側に一人ユダが描かれ 裏切り者が誰なのかすぐわかる構図になっている。
例えば 後代の ダ・ヴィンチの最後の晩餐では ’ 犯人 ’ が誰なのか 一見分からないし、
弟子たちの配置・構図には 動きがあってダイナミックだ。
そういう意味で、 良し悪しではなく 時代の変遷というものがよくわかる例と言えるのではないだろうか。
08. 1階奥の方では 古書の修復作業が行われていた。 古書の傷みが激しい場合は
一旦全てをバラバラにして、 ’ 和紙 ’ の裏打ちなどで 丁寧に装丁し直すそうだ。
ここでもきっと 和紙が珍重されているに違いない。 不思議と学芸員が日本人に見えてくる ・・
09. 視線の先に ダビデ像を捉えつつ、 カフェで お茶を一杯 ・・・
10. ここは 「 新市場のロッジア Loggia del Mercato Nuovo 」
革製品をはじめ 様々なモノが売られている。 迷路の探索のようで 中を巡るのは楽しかった !
11. さて この市場の一角に イノシシのブロンズ像が置いてある。 ご多分に漏れず
鼻を触ると幸せになれるとかで 鼻先は金ぴかだが、 それだけでなく またがる人も沢山いる。
イノシシ君、 1640年頃の制作当時の愛称 仔豚を意味する 「 ポルチェッリーノ Porcellino 」
という名前で ずっと呼ばれて来ている。
12. しかし これもまた レプリカで、 本物は美術館送り!? となった。
13. イタリア人女性の立派なお尻は イノシシ君に全然負けてない ・・
ふと足元に目を落とすと、 へびやカエル カメやカタツムリ 沼地の植物など リアルに表現されている。
いのししが生息するのは 雑草が繁茂する森林や草原だが、 ダニを落としたり 体温調節の為
泥地でのたうって 体を擦り付けたり、 まともに泥水に飛び込んだりするらしい。
イノシシ像の足元にこんな水場を描くなんて 作者はモノをよく知っているのだナア~
妙に感心しながら ’ 観光客の撮影会 ’ の様子も ニコニコしながら 眺め続けました ・・
★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜★