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2012年1月 2日 (月)

ゴーギャン 「黄色いキリスト」は左右が逆!(その2)

ゴーギャン 実在する「黄色いキリスト」(その1)の続きです

 

                                                      


07.           「 グロテスクな頭部を持つゴーギャン像 」
 

親指を口に入れ、妙な顔つきの 達磨によく似た焼き物、 

これはゴーギャンが抑圧された自分自身を表現したものだ。

07_2








08.      「 黄色いキリストのある自画像 」 1889年

 

画面の左側に 黄色いキリスト が、 右側には  07.の グロテスクな頭部の焼き物が、 

そして 真ん中に自画像、 という構図 だ。

 

ゴーギャンは 自分の中に 聖なるものを求める 繊細な人間と

粗野なインディオの血が 混在していることを 自覚しており、
 

その狭間で葛藤する様を この構図で 象徴的に表現していると言われる。

08_2




ところで よく見ると キリストが元絵とは 左右が逆になっている。

 

” 鏡を見て描いたから ”、 というのが 定説になっている。 

しかし、 ゴーギャンは あちこちで描いたものを アトリエで再構成する名人でした。

見たものを そのままにしか描けなかったゴッホと 喧嘩になったことは 有名な話。


キリストを左右逆に描くなんてことは 朝飯前だったでしょう。

 


しかも 右側の グロテスクな頭部 は 左右逆にはなっていない。

鏡に忠実なら こちらも逆のはずだ ・・

 

つまり、この混乱した構図こそ 自分を取り巻く 「 聖と俗 」の葛藤を際立たせる 

のに役に立つ、 と彼は考えたのかも知れない。

 

                             


さらによく見ると ゴーギャンの 左目は爛々と輝き、右目は失望と混乱で 

濁っているかのようだ ・・

それぞれの左右の目を アンバランスに描いている。        そして、

キリストもグロテスクな頭部も 目がアンバランスだ。  全て意識的な作業だろう。





 

09.      さて、これが礼拝堂にある 「 黄色いキリスト 」の 実物の木像で 

首は 向って左側に傾いている。

 

飄々とした作風だが、 それがかえって ゴーギャンに

強いインスピレーションを 与えたのかも知れない。

09_2








10.      ゴーギャンは 座席のどのあたりに座ったのでしょう ・・・

10

  ( 目が慣れるまで かなり薄暗い堂内でした。 暗いので 早々に立ち去ってしまう

人もいるようですが、 お出かけの節は 入り口に 電気のスイッチがあるので 

見逃しませんように!  )

 

 

 

11.    礼拝堂の裏側、  屋根に 階段があり、恐らく 鐘を突くためと思われる。

 

いかにも田舎風の 素朴な礼拝堂で、 大聖堂にはない 不思議な魅力に

すっかりとりつかれてしまいました。

11






12.     ところで ゴーギャンは 政治活動していた父親の亡命に伴い、
 

子供時代 6年間 ペルーのリマで暮らした。
 

スペインの貴族出身だった母親の親戚の リマの大邸宅は 花や果物の香りが漂い、

南国風に華やかに飾り立てられていたという ・・
 
そして、  幼いゴーギャンは 褐色の肌を露わにした召使たちに 

それはそれは熱烈に可愛がられたという ・・


                              




後年 ゴーギャンが移り住んだタヒチの原形は 既に ここにあったと言えるだろう。

12

ところで、 母親は リマで 素朴なインカの陶器を熱心に蒐集し、 

そのコレクションは ゴーギャンに 生涯を通じて 深い影響を及ぼした。

 

” 三つ子の魂百まで ” と言うが、 自らをペルーの野蛮人と呼んだゴーギャンの

人生観も 芸術も、 
その源流はペルー時代にあり、

彼が後に暮らした マルティニックや ブルターニュ そしてタヒチより 早く

リマの影響が彼の魂に宿ったのかも知れない。





 

14.      さて最後に マルティニック時代の絵を取り上げてみたい。
 

「 マンゴーの木の下で 」 1887年 

この絵からは もう既に 後のタヒチが透けてみえるが  実は、この絵の購入者は

ゴッホの弟、テオだった。

ゴーギャンのこの時代の絵に深く感銘したテオは、 自らのコレクションに加え 

その後も ゴーギャンを何くれとなく 支援し続けて行く ・・・

13


ところで 蛇足ながら、 ゴッホが尊敬するゴーギャンを アルルに誘ったのは

当然だと 頷けますが、 ゴーギャンの方がその気になったのは 不思議なことです 

当時 ゴーギャンも少なからずテオの世話になり その人柄には充分接していたはずで

南仏の魅力もあっただろうが  恐らく、テオという 後ろ盾に対する 感謝と信頼、

経済的支援が あったればこその決断だったのではないだろうか・・・

 

声をかけられた多くの画家のうち ゴッホに合流しようなどという者は

当時 誰一人、いなかった訳ですから・・・

                         


オーベール・シュル・オワーズ Auvers sur Oiseで ゴッホの死んだ部屋を訪ね、

フィンセントとテオ兄弟が 並んで眠る墓に詣で、

その後ブルターニュの西の果て ポンタヴェンまでゴーギャンの足跡を追って来ました。




絵画好きには 堪らない旅でしたが  
感慨深いものもありました。

” つくづく、 画家の人生って 一筋縄ではいかないものだなあ ” っと。

                          

 

 

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コメント

新しい年を迎えました、今年は良い年になるといいですね。 さて、早々とブログアップされたbellaさんに感心しています。 見たままを描くことから、想像力を使って画面を構成する手法に向かった後期印象派の中のゴーギャン、絵を見ているだけではわからないさまざまな事があったのですね。 私はまだ、見ている風景とかものをそのまま描いているだけですが、いつか自分の想像性(創造性)を活かした作品製作ができるのか?、と考えさせられたお正月でした。

bellaさん、新年おめでとうございます
美術鑑賞は好きですが、いつも感覚的に「これは好き」とか「苦手」くらいにしか観ていないので、
背景や出来事、人間関係等々含めて鑑賞すると、ものすごく楽しいし、感動しますね。
今回のゴーギャンの話は、何だか「泣きそう」な気分になりました。
いつもわかりやすい解説をありがとうございます
今年もよろしくお願いします

bellaさんんのフランス美術史紀行、ますます冴えわたっての新年ですね(!)。
こうやって拝読すると、1人の画家に象徴されるような、芸術家の魂の彷徨い、
「業」とでもいったものに感動をすら覚えます。
我に返って、トレマロのチャペル、素敵ですねぇ。屋根の階段が泣かせます。
プレ、ポストモダン(?)
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

bellaさん
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いいたします

いかにも bella さんらしい旅、個性的な旅ですね。
ゴーギャンという一人の画家の足跡を追っての旅、感慨深い旅になったと思います。
そして、絵の中から感じられた疑問、そして想像力、とても感性豊かで、
読みながら「えっ?」と、もう一度絵を見てみたりしていました。
芸術に疎い私ですが、今年はbellaさんのブログで少しは勉強します (^_^)!

bellaさん、
ゴ-ギャンの身内にインディオがいたということですか?

bella さん 
  あめでとうございます
    新年もよろしくおねがいします、

好き新年をお迎えの事と思います
なかなか触れ得ないもの、そして中味の濃さに驚きながら見させていただいて
居る事に感謝しています
コメントも入れずにごめんなさい。

遅れましたが明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。
新年早々に素敵なブログを掲載されていたのですね。
そして「不条理が付き纏うのが芸術、そして合理性に支配されてしまった現代にあって芸術はどこへ」と投げかけるあたりは、正月ボケの小生をハットさせる流石はbellaさんブログと、感心しています。
さて礼拝堂の黄色いキリスト初めて拝見する事が出来有難うございます。
ゴーギャンの黄色いキリストと見比べながらbellaさんの解説を読ませて頂くと、疑問がお陰様である程度解けました。
ただゴーギャンの黄色いキリストの顔が、礼拝堂のキリストの顔や、黄色いキリストのある自画像のキリストの顔と比べると、実に悲しそうな顔をしているのが気になりました。

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